引越し中の損害やトラブルに備えるために引越しにまつわる保険について知ろう!

引越し中の損害やトラブルに備えるために引越しにまつわる保険について知ろう!

引越しは新しい生活のスタートですが、万が一の損害やトラブルに備えるためには保険の加入が重要です。本記事では、引越し中のにまつわる保険の種類や加入方法について解説します。

<記事作成に協力いただいた方 : 木村 隆紀(きむら たかのり)氏>

木村様■サイトURL:https://ifyls.com/

シニア・経営者向けファイナンシャルプランナー(FP)
屋号は「くらしサポート」。


【コメント】
人々の充実した人生に伴走する事を軸に企業の離職予防支援、くらしとお金の相談(iDeCo・NISA等)、
ライフプラン作成、終活、相続、事業継承支援に活動中。介護と育児を契機に独立。人生の過去を踏まえて人生の歴史を描く「未来志(史)」を提唱し、中立客観性の高い複眼の視点から「お金」、「モチベーション」、「食」を通じ人生に伴走するサポート。
産業カウンセラー取得実績があり傾聴が得意。支援をする時に自分のアドレナリンが出てきます。

引越し業者が保険に加入しているかを確認しよう

引越し業者には、国が定めた一定のルールを守ることが義務付けられています。このルールは正式には「標準引越運送約款(以後、「約款」)」と呼ばれていて、引越し業者と依頼主間のトラブルを防ぐ目的で国土交通省によって定められています。この約款に基づき、引越し事業者には、運搬中に万が一荷物の破損・紛失があった場合、依頼主に対して補償をする義務があります。また、引越し業者は見積もり時にこの約款を依頼主に提示しなければいけないことになっています。
そして、この補償義務を果たすために、ほとんど引越し業者は「運送業者貨物賠償責任保険」(以後、責任保険)という損害保険に加入していて、引越し業者に問題があった場合の損害はこの責任保険から賠償されます。約款では、荷物の一部の紛失または破損については荷物を引き渡した日から3カ月以内に通知すれば補償されることになっています。

監修者コメント
稀に責任保険に加入していない業者もいるようです。まずは責任保険に加入しているか事前に確認した方がよいでしょう。
ちなみに、大手の引っ越し業者は案件ごとに責任保険を入るというより、年間で包括契約という形で契約しています。

責任保険の補償範囲と特約保険について

このように、引越し業者は責任保険に加入していることが一般的です。そこで、具体的な補償範囲について詳しくご説明していきます。また、責任保険の他に「特約保険」という保険もあるため、その違いについても見ていきましょう。

責任保険(基本保険)

引っ越しを依頼すると自動的に加入する引越し業者から提供される基本の保険です。国が定めた責任保険をもとに、それぞれの業者が独自に基準を決めた基本的な補償です。一般的な補償内容は事前の契約や業者によって異なるため、詳細を確認することが重要です。
また、荷物の破損や紛失などの場合に補償が受けられますが、補償範囲には限りがありますので、注意しましょう。特に国が定めた約款では、以下のものについては拒絶される場合があると記載されています。

  1. 現金、有価証券、宝石貴金属、預金通帳、キャッシュカード、印鑑等、自分が持参できる貴重品
  2. 火薬類その他の危険品、不潔な物品等他の荷物に損害を及ぼす恐れのあるもの
  3. 動植物、ピアノ、美術品、骨董品等運送にあたって特殊な管理を要するため、他の荷物と同時に運送することに適さないもの
  4. その他、パソコンやサーバーと言った壊れやすい物や、生鮮食料品のような変質したり腐敗しやすいもの
監修者コメント
ちなみに、私が過去に引っ越しした時は、上記1項は持参し、植物は引っ越し業者さんが受け付けてくれました。ピアノはそのれ専門業者さんに頼み、金魚は手持ちで引っ越ししました。

特約保険

基本保険に加えて、追加で加入することができる保険です。たとえば、高額な家具や美術品の損害に対する補償や、運送中の事故による被害などに対する保障が含まれています。自身の荷物の価値やリスクに合わせて適切な特約保険を選びましょう。

特約保険の多くは引っ越し業者が追加補償として提供することがほとんどです。業者ごとに内容が異なるため、まずは運搬を依頼するものをリスト化し、それを業者さんと一緒に見比べながら、基本保険で補償できるもの・できないもの、を明確にしましょう。そして、上限補償額と補償されない荷物の価値などを考えて特約保険に加入する必要があるかどうか決めるのがおすすめです。

また、上述の定款にある「拒否される可能性があるもの」について、特約で補償される場合もあります。補償範囲や金額を踏まえてお得だと思う場合には加入するのも一つの選択です。その際、補償限度額は上限1000万円となっていますが、業者ごとに異なりますので必ず確認しましょう。

監修者コメント
ピアノや美術品については、定款記載の通り拒否される可能性も高いため、その点は頭に入れておきましょう。拒否された場合には運搬専門業者さんを新たに探す必要があります。
また、基本保険の補償金額についてはインターネット上では上限1,000万円程度とかかれていますが、知り合いの大手引っ越し業者さんの場合は上限が30万円でした。このように、業者さんによってかなりの幅があるため、打ち合わせ時に上限補償金額について確認しておきましょう。また、金額も勿論ですが、補償の範囲も考慮して決定したほうがよいでしょう。
その他、特約保険を積極的に検討したほうがよいケースとして、都道府県を跨ぐような長距離の引っ越し、どこかで車中1泊する、または海外への引っ越しのような場合が挙げられます。

あわせて、金銭補償では補えないような、価値の評価が難しい唯一無二のもの(芸術品、個人が作った創造物、家族や友人との思い出の物など)をどうするのかも考えておきましょう。このようなものは金銭換算できず、破損しても二度と戻ってきません。また、価値の評価が難しいため弁償交渉も難しくなります。そのため、唯一無二のものを持参するのか、どう扱うのかは、事前に決めておきましょう。

ここまで、基本保険と特約保険について説明してきました。ただし、人によっては引っ越し業者の提供する基本保険では補償範囲や補償金額では十分でなく、業者さんが提供する特約保険では費用対効果や範囲や金額が合わない、と感じる可能性があります。その場合は、第三の引っ越し保険会社を探す必要があります。その場合も事前作成したリストをもとに、基本保険の補償対象外の荷物について相談していきましょう。

保険の加入方法

続いて、保険の加入方法について詳しく説明します。引越し業者との契約時に加入する方法のほか、別途保険会社に申し込む方法などがあります。

引越し業者からの加入

多くの引越し業者では、引越しの際に特約基本保険の加入を勧めています。契約時に加入手続きをおこなうため手間はかかりませんが、保険内容や補償範囲をよく確認しておきましょう。また、特約保険の加入を希望する場合は、業者に相談し手続きを進めましょう。

別途保険会社への申し込み

引越し業者の保険だけでは不安な場合は、別途保険会社に申し込む方法もあります。インターネットや電話での手続きが必要ですが、保険の選択肢が広がります。手続きの流れや必要な書類については、保険会社の公式サイトや問い合わせ窓口に確認しましょう。保険料や補償内容を比較し、信頼できる保険会社を選ぶことです。

保険に加入する際の注意点

引越しにまつわる保険に加入する際は、以下の点に注意しましょう。

補償範囲の確認

保険を選ぶ際には、補償範囲をよく確認しましょう。基本保険や特約保険の内容や限度額、免責金額などを確認して、自身の荷物やリスクに適した保険を選びましょう。また、保険の対象となる事象や補償条件についても注意深く読みましょう。

補償対象の詳細な記録

引越し前に、荷物の詳細なリストを作成しましょう。貴重品や高額なアイテム、壊れやすい品物などは特に記録し、写真や動画などで補償対象の証拠を残しておきましょう。これにより、保険請求時の補償手続きをスムーズにおこなうことができます。

保険料の比較と費用対効果の検討

複数の保険会社や引越し業者の保険を比較し、保険料と補償内容のバランスを考えましょう。保険料だけでなく、補償内容や免責金額、保険会社の信頼性などを総合的に判断して、費用対効果の高い保険を選びましょう。

契約書の確認

保険契約書は十分に読み、理解した上で署名しましょう。契約書には保険の詳細な条件や特約内容、契約期間、支払い方法などが明記されています。特に細かい字や曖昧な表現に注意し、疑問点や不明な点は保険会社に質問するようにしましょう。

また、約款では以下の理由での荷物の滅失、損傷又は遅延の損害については、損害賠償の責任を負わないことが記載されています。

  1. 荷物の欠陥、自然に消耗した物
  2. 荷物の性質によって発火、爆発、むれ、かび、腐敗、変色、さびその他似た理由のような物
  3. ストライキもしくはサボタージュ(争議や破壊活動)、社会的騒擾その他の事変又は強盗
  4. 防ぐことができない火災や交通事故等のトラブル
  5. 天変地異(地震、津波、洪水、暴風雨、地すべり、山崩れその他の天災)
  6. 法令又は公権力の発動による指示
  7. 引越し業者の過失以外で受けた事故や破損
監修者コメント
以上については交渉しても条件を緩めるのは難しいかもしれません。
また、引っ越し後に万が一、引っ越し荷物や部屋の損傷が見つかったら、損害箇所の写真を撮っておきましょう。もし、作業員さんが現場にいたら一緒に確認しておくと確実です。補償手続き時その写真を添付して、業者さんに申請します。

引越し業者の信頼性の確認

基本保険を引越し業者から提供される場合、業者の信頼性も重要です。事前に業者の評判や口コミを調べ、信頼できる業者を選びましょう。また、特約保険の場合は、保険会社の信頼性や評判も確認しましょう。

引越しトラブルを防ぐためにしておきたいこと

引っ越し中のトラブルについて保険の加入も大切ですが、多くのトラブルは事前準備をすることで未然に防ぐことができます。そこで、予防策をご紹介します。

業者に運んでもらうものなどをリストにして共有する

特に引っ越しで多いトラブルは紛失と破損です。紛失について、もし業者が認識しているものであれば、保険の範囲で補償してもらえる可能性がありますが、元々あったかどうか曖昧な場合、依頼主も引越し業者も「自分の責任ではない」ということを証明するのが難しくなります。そこでおすすめしたいのが、「運んでもらうものリスト」の作成です。「保険に加入する際の注意点」の項でもお伝えした通りリスト作成をすることは重要ですが、これを引越し業者が内見で来た時に渡して、「確かに引っ越し前には物はあります」ということを伝えておくことが非常に重要です。これにより、紛失した際に業者側の補償義務であることが明確になるためです。こちらで準備しなくても業者からリスト作成を依頼される場合もあり、リストに記載されているもののみが補償の範囲となります。さらに、リストに記入されているものについて写真を撮り、それぞれの大まかな価値を記入していきましょう。
なお、「運んでもらうものリスト」を作成する際には、「処分するものリスト」も一緒に作っておくとよいでしょう。引越しの見積金額は荷物量によって業者がトラックのサイズと人足で見積が出てきます。事前に捨てるものと、持参するものが分かっていれば正確に見積もりを算出してもらうことができます。

引越し元・引越し先の写真を撮影しておく

引っ越し元と引っ越し先の部屋の写真を撮影しておくのもおすすめです。万が一、業者が引っ越し元と引っ越し先の部屋を傷つけてしまった時に、元の部屋の状態を伝えるのに役立ちます。

処分するものをわかるようにしておく

当日までに引っ越しするもの捨てる物は作業者が分かりやすいように区別しておきましょう。捨てるべき荷物の半分以上が引っ越し先に運ばれてしまったという事例もあるため、業者にもわかるように区別しておくことが重要です。また、業者によっては引っ越し時に捨てる物を廃棄してくれることがあります。業者ごとに対応が異なるため、事前に確認してみてください。

おわりに

引越しは緊張と期待に満ちた大事なイベントですが、損害やトラブルに備えるために特約保険の加入も選択肢の一つです。本記事をまとめると、引っ越し時のトラブルを防ぐために大切なことは、見積金額や契約内容の確認、運んでもらうものリストの作成と共有、現品・引越し先・引越し元の写真撮影、破損と紛失等に関わる保険の範囲・補償金額・免責事項の確認、不要品(廃棄品)の取扱いの確認などです。
ぜひ、これらの情報を参考にして、安心して新しい生活をスタートさせてください。