
光と陰が印象的な作品です。何度も通われてようやくこの一枚をものにされたそうですが、その努力の甲斐あって、完成度の高い作品に仕上がっています。粘り勝ちといえるでしょう。雲の感じもすごくいいですね。この表情豊かな空がこの作品のいちばんの魅力であると感じました。たしかに雲ひとつない鮮やかな青空はインパクトがあってキレイでが、この作品のように雲があったほうが写真としての表現力は豊富に感じられて、見る人の想像力もかき立ててくれます。画面を構成する明暗のバランスもよくて、夜の闇の世界から、日の出と同時に列車が飛び出してきたような、未来への希望が感じられる力強さが好印象です。
(岡嶋 和幸)
ご応募いただいた多くが自然を走る写真だった中で、新幹線が東京の中心地をダイナミックに疾走するこの写真は目を引きました。新幹線でも500系というのがさらにこの写真の魅力を高めていると思います。デザイン的な評価も高い500系新幹線は未来へ駆け抜けるイメージを感じ、新しい高層ビル群を横目にゆっくりと走っていくこの写真は、未来の想像図ではないかと思ってしまったほどです。私は拙著の中でも書かせていただいているように、在来特急が消えていくことから新幹線を好きになれないのですが、新幹線と向き合ってみようかなと感じさせてくれました。次回新幹線を利用する際は、駅探で500系のダイヤを探し乗ってみるつもりです。
(吉田 一紀)
広がる青空、緑の大自然にDE15ノロッコ号塗装……これほどまでに合うのかと驚かされました。臨時停車駅・ラベンダー畑駅での写真ということも興奮しますが、ラベンダーそのものは写っておりません。しかし、okigaruさんのコメントにあったように、この年は酷暑のためラベンダーが咲き乱れていたそうですが、そんなラベンダー畑の中をこのDE15はゆっくりと走ってきたのだろう、しかも土のかおりのするそよ風がトロッコ客車の中を優しく吹き抜けたのだろうことまで想像させてくれます。このような写真を見ると、列車の旅に出かけたくなるのは私だけではないでしょう。
(吉田 一紀)
私は小学校低学年まで旧国鉄真岡線(現・真岡鐵道)沿線で育ったことから、思い入れの強い路線です。審査をさせていただく際、どうしても真岡鐵道関係に目を奪われてしまいました……お許しください。その中でもこの写真を選ばせていただいた理由は、真岡鐵道の新しい魅力を見せてくださったからです。真岡鐵道に『SLもおか号』が走っているのは有名ですが、私は茂木駅で留置されている姿を見逃していました。しかも、花火とのコントラストが最高です。茂木駅の裏にある白樺公園で毎年夏に打ち上げ花火があるそうで、それを狙って撮ったのがにくい! 真岡鐵道には見るべきポイントがたくさんあると再認識させられました。
(吉田 一紀)
私は拙著の中で書かせていただいたように線路を眺めるのが大好きです。特に、列車が走っている姿ならカーブ路線、線路そのものならどこまでもまっすぐのびる路線に注目しています。まっすぐのびる線路としては、この写真に最高得点を与えたいと思いました。紅葉した山々と風に揺れるススキが無機質な線路に合うのはもちろん、私が特に注目したのは手前が若干カーブしていること。これがアクセントとなり、私をさらに興奮させてくれました。バラストにレールの錆がついている風合いもよく、規則正しく並んでいるまくら木と犬釘に不思議な魅力を感じる……いつまで見ていても飽きない写真です。
(吉田 一紀)
車両を写真におさめる場合、先頭から、もしくは最後尾から撮影することが多くなってしまいます。そのほうが車両の全体像を見ることができるので当然ですが、この写真のように側面、それも後追いで撮るのも鉄道の違った魅力を見ることができ、私は大好きです。しかも、貨物列車が太陽の光を受けている様子がまた素晴らしい! 駅のホームが影になっているのかと思いますが、貨物列車の上半分だけが照らされているのも趣があります。無機質感の貨物列車に太陽の光があたる様子はとても美しく、私はいつも見とれてしまいます。また、EF66の下枠交差型パンタグラフを眺めるにはこの角度が絶妙ですし、コキに乗っているコンテナは画一的なボックス形のはずが部分的に歪んだ線があったり、何とも味わい深い写真だと思います。
(吉田 一紀)
山奥の静かな無人駅。風の音以外何も聞こえなく、列車が近づいている気配はまったく感じない。でも、遠くからゆっくりと気動車が近づいていることはレールだけが知っている。レールに耳をあててみると、小さな走行音が響いているのだ。その音は次第に大きくなり、やがて気動車の汽笛が聞こえてきた……そんな少年時代の思い出を彷彿とさせてくれる写真です。私が幼少の頃、従兄弟が家に遊びにくると、近くを走る真岡線に行っては一緒にレールに耳をあてていました。レールから伝わってくる走行音に興奮したものです。私は一人で行く勇気がなく、年上の従兄弟が来たときのみの楽しみでした。今思えば危ない遊びで勧められませんが、私が鉄道好きになったきっかけの一つであるのは間違いありません。たんちんさんに同じ思い出がおありではないかもしれませんが、童心に帰り夢中でカメラを構えたのではないでしょうか。そんなワクワク感が伝わる写真です。
(吉田 一紀)
セピア色の写真を多くの方が投稿してくださいましたが、その良さをもっとも活かした写真ではないかと感じました。大井川鐵道は往年の名車たちがいまだ現役で活躍しており、また新金谷駅横の車輛区には多く留置されているので、昭和の雰囲気に包まれていますが、それをセピア色で撮ることによってさらに当時の世界へタイムスリップさせてくれます。木の電柱と激しい雨がいっそう雰囲気を高めてくれているように思います。優秀賞に選ばせていただく12枚はカレンダーに採用するという目的があります。セピア色の写真は季節感をとらえにくいため、どうしてもピックアップできませんでした。しかし、素晴らしい鉄道と風景写真の一つとして、ここに取り上げさせていただきます。
(吉田 一紀)

岡嶋 和幸(Kazuyuki Okajima)
福岡市生まれ、写真家。世界各地を旅しながら撮影した作品をさまざまなメディアで発表。写真展の開催や写真集の出版など精力的に活動中。
吉田 一紀(Kazutoshi Yoshida)
東京都生まれ。脚本家・ライター・構成作家。今まであまり注目されなかった鉄道の脇役たちまで楽しめる「モハようございます。あの人はなぜ、鉄道にハマるのか?」を出版。
オオゼキタク(Taku Oozeki)
地元横浜にてライブ活動を展開するシンガーソングライター。メロディはとてもやわらかく、 その歌声は純朴で真っ直ぐといわれ、テレビ系ドラマの主題歌に抜擢され注目を浴びる。また、趣味の鉄道ブログも彼らしい視点で人気を誇る。
小倉 沙耶(Saya Kokura)
愛知県出身。鉄道アーティスト。「鉄道に関わるすべての人が、いつも笑顔でいられるように」を合言葉に、イベントMCや歌手、クラフト等を通じて鉄道に 関わる様々な活動を行う。